「試用期間」と聞くと、会社が自分を試している期間だと思うかもしれません。半分は当たっていますが、半分は違います。
労働契約は、入社した日から始まっています。試用期間中でも、あなたはその会社の従業員です。フルタイムで働く場合、社会保険は入社日から加入するのが原則ですし、労災保険は試用期間中でも適用されます。会社が「試用期間だから」と言って、雇うかどうかを自由に決められるわけではありません。
期間の長さも、法律で決まっていません。3か月の会社もあれば、6か月の会社もあります。ただし、必要以上に長い期間が無制限に認められるわけではありません。だから、入社前に確認しておくべきことが1つあります。試用期間のあとに、何がどう変わると本採用なのかです。口頭ではなく、労働条件通知書に書かれているかを見てください。労働基準法第15条は、賃金・労働時間・契約期間などの主要な条件を、書面で明示することを会社に義務づけています。
| 確認すること | 見るところ |
|---|---|
| 試用期間の長さ | 労働条件通知書の「試用期間」欄 |
| 本採用の条件 | 「試用期間満了後、勤務成績・業務能力を考慮して判断」などの記載 |
| 試用期間中の賃金 | 基本給と違う場合は、その額と理由 |
| 社会保険 | 入社日から加入か、試用期間後か |
もう1つ、知っておくと気が楽になる話です。
労働基準法第21条は、試用期間中の人を、解雇予告の規定(同法第20条)の外に置いています。ただし、雇い入れから14日を超えて引き続き雇用されている場合、この例外は当てはまりません。原則として30日前の予告か、不足する日数分の平均賃金に相当する解雇予告手当が必要です。たとえば、10日前に予告するなら20日分の手当が要ります。
判断は、設定された試用期間の長さではなく、実際に14日を超えて働いているかどうかで行われます。
また、予告や手当があれば自由に解雇できるわけではありません。試用期間中でも、合理的な理由なく解雇することはできません(労働契約法第16条)。本採用を拒否することも、裁判では解雇と同じように扱われてきました。つまり、会社側にもそれなりの理由と手続きが要ります。「試用期間だから、いつでも切れる」という会社は、法律の理解が怪しいと考えたほうがいいかもしれません。
ここで大事なのは、身構えることではありません。試用期間は、双方が確認する期間だということです。会社があなたを見るのと同じように、あなたも会社を見ていい。研修の量、先輩の教え方、残業の実際、評価の基準。3か月は、それを見るのにちょうどいい長さです。
1か月目にやることは、覚えることではありません。聞くことです。
分からないことを分からないと言える人は、この時期に一気に伸びます。逆に、黙って抱え込む人が、いちばん危ない。分からないまま作業を進めて、最後に全部やり直しになる。これが、最初の3か月でいちばん多い失敗です。
聞き方には型があります。
1. 「今、少しお時間いいですか」と、相手の都合を先に確認する
2. 「この作業の、ここが分かりません」と、分からない場所を特定して聞く
3. 「こういう理解で合っていますか」と、自分の理解を復唱する
4. 教わったら、その日のうちにメモを見返して、1回だけ自分でやってみる
ポイントは3番目です。「分かりません」だけだと、相手はどこから説明すればいいか分かりません。自分の理解を一度出してから聞くと、話が早く終わります。これは、競技で言えば、フォームを直すときに「こう振っていますよね」と確認するのと同じです。
2か月目に入ると、仕事が少しずつ任されます。ここで意識してほしいのは、任された範囲を、最後まで自分で回すことです。
やったことを報告する。終わらなかったら、どこまで進んで、何が止まっているかを報告する。判断に迷ったら、自分で決めずに、選択肢を2つ持って聞く。この3つができれば、この時期は乗り切れます。
特に大事なのが、悪い報告を早く出すことです。遅れる、間違えた、お客様に確認が必要になった。どれも、早く言えば小さい問題で済みます。1日遅れると、取り返しがつかなくなります。報告が遅い人は、能力の問題ではなく、信頼の問題になってしまいます。
報告は、型で覚えると迷いません。そのまま使える3つを書いておきます。
| 場面 | そのまま使える言い方 |
|---|---|
| 終わったとき | 「◯◯、終わりました。確認をお願いします」 |
| 終わらないとき | 「◯◯は△△まで進みました。□□で止まっています。進め方を確認させてください」 |
| 間違えたとき | 「◯◯で間違えました。いま、こう直しています。お客様への連絡が要るかもしれません」 |
3つに共通しているのは、事実・現状・お願いの順で話していることです。感想や言い訳を先に置くと、聞いている側は何をすればいいか分かりません。
3か月目には、試用期間の評価面談があります。ここで聞かれることは、だいたい決まっています。
・この3か月で、できるようになったことは何か
・まだできないこと、不安なことは何か
・職場のことで、改善したほうがいいと思うことはあるか
1つ目は、具体的に答えてください。「だいぶ慣れました」ではなく、「この作業は、1人で最後までできるようになりました」と、作業の名前で答えます。2つ目は、正直に言ったほうが得です。できないことを隠しても、そのあとで困るのは自分です。3つ目は、遠慮しなくて構いません。入ったばかりの人の指摘は、いちばん新鮮です。
そして、忘れずに確認しておきたいのが有給休暇です。労働基準法第39条では、雇い入れの日から6か月間続けて働き、その間の全労働日の8割以上出勤していれば、原則として10日の年次有給休暇が付与されます。試用期間も、この6か月に含まれます。ただし、勤務日数や時間が少ないパートなどの場合は、付与日数が異なります。
3か月目の評価面談の前後に、辞めたいと思う人がいます。珍しいことではありません。ただ、その理由を一度分解してください。
多いのは3つです。仕事が合わない、疲れが取れない、人が合わない。この3つは、対処の仕方が違います。仕事が合わないなら、配属や担当の変更で解決することがあります。疲れなら、休めば戻ります。人が合わないなら、距離の取り方で変わります。どれも、辞める前に試せる手があります。
だから、辞めたいと思ったら、まず1週間休んでください。有給がまだなくても、体調不良として休むことはできます。休んで、それでも同じ気持ちなら、次に進むことを考えればいい。
そして、辞めるかどうかを1人で決めないでください。会社の上司でも、家族でも、IforCの面談でも構いません。話してみると、理由が2つに分かれていることに気づくことが多いです。本当は続けたい部分と、どうしても無理な部分です。無理な部分が1つだけなら、多くの場合、配置や働き方で調整できます。
試用期間は、会社があなたを見る期間です。同時に、あなたが会社を見る期間でもあります。合わないと判断して辞めることは、失敗ではありません。ただ、疲れているときの判断は、あとで後悔しやすい。そこだけ、気をつけてください。
最初の3か月は、4つのことだけ押さえてください。
1つ、試用期間の条件を、入社前に書面で確認する。
2つ、1か月目は、分からないことを分からないと言う。
3つ、2か月目は、任された範囲を最後まで回して、悪い報告を早く出す。
4つ、3か月目は、できるようになったことを作業の名前で話す。
競技を続けてきた人は、毎日同じことを積み上げることに慣れています。その積み上げ方は、この時期に生きるはずです。最初の3か月で問われるのは、才能ではなく、その積み上げ方です。